第60回日本腎臓学会学術総会

総会長挨拶

第60回日本腎臓学会学術総会 総会長 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野教授)

 第60回日本腎臓学会学術総会を平成29年 5月26日(金曜日)~5月28日(日曜日)の3日間にわたり、仙台国際センターにて開催させて頂きます。仙台での腎臓学会学術総会の開催は初めてとなります。この機会をいただきまして会員の皆様には心より感謝申し上げます。今回の開催に当たりましては私の同級生である佐藤博教授(東北大学薬学研究科臨床薬学)を副会長とし、宮崎真理子特命教授(東北大学病院腎高血圧内分泌科科長、血液浄化療法部部長)を事務局長として、プログラム委員会のご指導をいただきながら本会の運営を計画しております。よろしくお願い申し上げます。
 本学術総会のテーマは「深化する腎臓学~科学と実践~」とさせていただきました。日本腎臓学会は多くの分野で世界をリードする研究を展開してきており、現在も、若手研究者の積極的な活動が国際的にも高く評価されています。医学は症候論からはじまり、病態生理、分子機序、遺伝子レベル、そしてその先には原子レベルでの解明が行われようとしています。腎臓学もその例外にもれず、一連の方法により病因や成因の解明が進んできましたが、その一方で、問題は必ずしも直線的ではなく、ほとんどの場合が複合的であることが明らかになりました。また、特に遺伝子操作による腎臓の基礎研究から他の臓器の病態が明らかになることもあり、また、逆に、他の臓器の研究から腎臓の関連が明らかになることもあります。いまや、分子や遺伝子を取り扱う研究は臓器を超えたものになっています。
 一方臨床の現場では、免疫、高血圧、腎性貧血、Ca-P代謝などに関しての治療の進歩が見られていますが、腎臓(病)自体に対する創薬はほとんど実現していないといっても過言ではありません。腎臓は極めて複雑な臓器で、全身の代謝・恒常性と循環動態に大きな影響を与えると同時に、それらの影響を大きく受けている臓器でもあります。特に、末期腎不全の主な原因となり、現在でも増加し続けている糖尿病性腎症と腎硬化症の問題に関しては、学術的進歩と同時に患者一人ひとりのレベルでの実践が重要です。昨年、日本腎臓学会は「生活習慣病からの新規透析患者の減少に向けた提言」を発表しています。この確実な実行のためには、医師のみならず、保健師・看護師・薬剤師・生理検査技師・理学療法師・栄養士などのコメディカルの方々が密接に連携することが重要です(これに関するシンポジウムも企画しました)。以上のように、腎臓学は科学的に多様な広がりと深化が進んでいますが、一方では、得られた知見を確実に実践の場に届ける必要があります。
 プログラムに関しましては委員会の先生方とも魅力ある学会プログラムになるように議論を重ねました。特に国際性の観点から、英語でのセッションを増やすことにし、高得点演題は英語での発表とし、優秀者を表彰することを試みとして行うことにしました。会長企画としては「腎臓と内分泌代謝」「災害医療」「新たな腎臓病治療の展望」としました。その他にも多くの素晴らしい内容のプログラムをプログラム委員会により構成していただきました。
 先の東日本大震災から約6年が経過し、被災地にはまだまだ多くの問題が残っていますが、復興への歩みは確実に進められており、仙台は震災以前の賑わいを取り戻しております。今回の学会場の仙台国際センターには展示場が併設され、多くの企画を開催することができます。また、地下鉄東西線の開通により会場までのアクセスも便利になりました。
 現在、学会のみならず産業界や行政のかたがたのお力を頂き鋭意準備を進めております。総会開催時期の仙台は杜の都にふさわしく木々の緑がもっとも美しく、気候もさわやかな季節です。皆様のご参加を心よりお待ちいたしております。

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